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訳者あとがき
以前、少し紹介しましたが祖父の翻訳した古書(精神医学の専門書)を読んでいます。

もともと多読を心がけ、今もアプリケーション攻略の本やビジネス・マーケティング本とごちゃ混ぜになっていてこれでは「変人」と言われてもしかたないと思いつつ、それでもやめられない。

あっちを読み、こっちを読みしているうちに吸い寄せられるような一文に出会い、打ちのめされながらinspireされる瞬間は人との出会いのようでもあるし、同時に第三の自分を垣間見るレビュー(?)のようにも思えてくるから不思議です。

先日も、その祖父の本の「訳者あとがき」に私はくぎ付けになりました。

『己に背くもの』(カール・A・メニンジャー)の訳者あとがきから抜粋

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 訳者個人としては、本書の初版が出てから十年以上経過した、今日版を新たにして発行して頂くことになったのを大変ありがたいと思っている。
 最初から一行ずつ原書と比べあわせながら読んでいくうちに、気に入らないところ(訳文の拙さ、誤訳など)がいくつも出て来た。このことは旧訳を読んで頂いた何万の読者に対して誠に申し訳ないと思い、汗顔している。そして今回の改訳にしても、なおしてもなおしてもよくならない箇所がいくつも出てくる。組版、校正を担当してくださる方々に悪いと思っていながらも、活字になった部分を書きなおさせて頂いた。今後何年か経って、もう一度初めから比較対照しながら読みなおす折りがあったとしても、やはり今回のような経験をするのではないかと思うと、私は、この翻訳という仕事が恐ろしくなった。

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この「あとがき」が書かれたのは昭和38年とあるから、その数年後に私は孫として生まれこの祖父に会っているはず。当時、祖父の家は世田谷の烏山にあり、閑静な、あまり華美ではない簡素な、でも風通しのいい日本家屋。土間もあったかもしれない。

ちょっと恐くて、ただし穏やかで、ハードカバーの本や洋菓子を買ってくれる祖父。ただ不思議な事に、私と祖父との会話の記憶はほとんどありません。

私自身「汗顔して」仕事の間違いと向き合うという体験はよくしており(あまり自慢できることではありませんが><)日々は葛藤というかまさに格闘。先日も新卒時代の「教育主任」だった元上司の広告ディレクターからたまたまメールでご連絡を頂いて「飲み」のお誘いをしていただいたのだけれど、それこそ自分の「新米デザイナー」時代の事を今思うと、それはまさに「顔に冷や汗」の醜態ばかり。しかもそういう記憶はなぜか自分に都合よく、普段はすっかり記憶からは消しさられているときてる。たまにその過去の失態を思い出しては、頭をかく。ひやぁ〜、何年経っても昔の上司には頭があがりません(笑)。

もちろんこの当時から、いえ、今だって、「まちがえたくてまちがえている訳ではない」のです。いつだって自信満々。これがベストだと信じていて、全力をつくした上でそれでこのあり様・・・。やはりそもそも人間は間違えるように出来ているのでは?というか、・・・もう、そうとしか思えなくなってきた。。


『おのれに背くもの』あとがきの続き


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(中略)
 私は兼ねてから自分が「おのれに背く」ような事を絶えず繰り返していることを、私なりに、気がついていた。だが今回本書を再読して、それが一層具体的に分かったように思う。ただ、日暮れて道遠し、の感がまざまざと身に迫り、時にはこの仕事をつづけるのがつらいと思う時期があった。
 過去六十余年にわたって自分が巡って来た道を振り返ってみて、自分が道を誤った決定的な時期が三十代の半ば過ぎから四十歳にかけてのことであったと思う。この意味で私はこの年代の人々に特に本書の熟読玩味をおすすめしたいと思う。

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胸が熱くなった。。




Merry Chrismas!
by ujipub | 2007-12-24 10:31 | books and more
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